北アフリカのスペイン領、セウタの国境を越えて最初の村、ムディックは貧しいところでした。
仕事がないので、男たちは日がな一日、カフェで過ごしています。
イスラムは酒を飲みませんから、一杯のコーヒーで何時間も粘るのです。
女子供は、ひたすら男の持ってくる食べものを待っているらしいのです。
で・・・翌日、女たちは青タンを作って、窓から外を眺めているのです。


マグロ漁の漁労長、サントの一家です。
こんな立派な男を見たことがありません。
夫共々、よくしてもらいました。
当時、52才といっていましたが、実は本当の年齢がわかりません。
貧しくて、出生届を出していなかったのです。
小さい時に奉公に出され、漁師の仕事を覚えて自分の船を持つまでになりました。
苦労人なので、お金持ちになっても威張ったり、奥さんを殴ることもありません。
息子と二人の娘を、パリの大學まで出しました。
私がひとりで町をウロついていることを知り、びっくりして、家に来るように誘ってくれました。
ここで、奥さんと娘たちからモロッコ料理を習いました。
多分、奥さんは、私と同年齢だったと思いますが、娘のように可愛がってくれました。
どんなに失敗しても、愛おしそうに抱きしめてくれました。

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サントの計らいで、近所の家にも呼ばれるようになりました。

これは、大好きな風習・・・家に招かれると、こんな風に手を洗います。
ヤカンの水は、ちょうど良い温度に温められています。

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子供が生まれたお祝いに呼ばれたのです。
子供の髪も顔も、ヌルヌルと赤く染まっており、母親の手のひらも真っ赤・・・びっくりして、
「いま、生んだの ? 」と、バカな質問をしてしまいました。
母親の方こそびっくり・・・周りにいた女たちが、お腹を抱えて笑いました。
魔除けのために、赤ん坊の顔や、母親の手のひらをヘナで赤く染める風習があるらしいのでした。
バカね・・・。

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お金持ちは、中の様子が伺えないほどの高い塀に隠れた大きな一軒家に住んでいます。
普通の家は、広いパテオの共同の井戸を囲むように何件かの家があります。
外ではスカーフで髪も顔も隠している女たちも、家では延び延びと明るい表情をしています。
男たちが、たっぷりと食べものを持ってこれる境遇の女たちの幸福度は高いのでしょう。

文字通りの井戸端会議にもよく出かけました。
おしゃべりをしながら、洗い物をする女たちの様子は、世界共通の笑い声で溢れていました。

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祝いの料理は、近所の女たちが総出で手伝います。
羊のタジンと、完熟トマトのマリネ、青豆のマリネ・・・どれも、香辛料がたっぷりで、なんどもおかわりが出てきます。

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子供たちも学校に行く以外は、あまり外に出しません。
東洋人のお客は、子供たちにとって大イベントだったのでしょう。
みんな交代で抱かれたがります。
みんな "抱かれ上手" 。
どの子も、しなやかに体を預け、抱く方の体に寄り添い、こちらの体の一部になった気にさせられるのです。
お腹いっぱい食べて、大人に抱かれる・・・これが、子供のもっとも幸福なことだと教えられました。

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当時は、パスポートもよほどのお金持ちでないと発行されませんでした。
サントの子供たちは、優秀な成績で大學を卒業たものの、そのままパリに残ることは認められませんでした。
二人の娘たちは、親の決めた男の元に嫁ぎ、何年かあとに会ったときには、青タンが出来ていました。
そのあと、二人とも子供を連れて、実家に戻ったようです。
息子は、サントのあとを継ぎましたが、苦労知らずで、従業員から毛嫌いされていました。
大學などに行ったことが仇になったようです。


               

# by aomeumi2 | 2019-01-28 10:32 | スペイン・モロッコ | Comments(12)



カナダから漁場が南スペインのリニアに移り、少しおくれて、私はマドリッド経由でマラガへ、そこからタクシーで六時間 ! ! !
アルへシラスのフェリー乗り場から北アフリカへ渡りました。
え・・・アフリカ !
私の頭には、アフリカという地図はありませんでした。
モロッコのベルベル人を見たのも始めてでした。
夫がスペインに赴任中、対岸の北アフリカ、セウタ(スペイン領)と、モロッコにも漁場が増え、そちらに移ったのです。

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その十年後の新しくなったフェリーです。
当時のフェリーは、ボロボロで、野良犬や野良猫が住み着いていました。
トイレに入ると、床は水浸し・・・ベルベル人の女たちが、ただの石鹸を使って、盛大に洗濯をしたり、
赤ん坊を洗ったり、髪の毛を洗ったり、水浴びをしていました。

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夫の車、フォルクスワーゲンのドアは壊れており、荒縄で結んでありました。
村に向かう街道には、アラブ語のコカコーラの看板が・・・どうしよう・・・こんなところに来て、日本に帰れるのだろうか ?

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小さな村の田舎の家には、街中からタクシーを使って女中が通って来ました。
噂では、その女中は、元売春婦で、ミッキーマウスのテーシャツでジーンズを履き、ルイビトンの財布を持っていました。
この村で、そんな恰好をしている女は、売春婦と女中と、私だけでした。

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女が外に出ることはなく、みんな、日がな一日、窓から顔をのぞかせているだけでした。
女たちの目の周りは青く染まっており、特殊な化粧かと思っていたら、男が殴った青タンであると、あとで知りました。
私も、ただただ、窓から外を眺める日々でした。

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時々、夫の仕事場に行きました。船も小さく、漁師たちは素人で、夫の髪は瞬く間に白くなりました。
集まっているのは、ほとんどが野次馬で、魚をもらいにきているのです。

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やがて、退屈を持て余し、私はひとりで市場に買い物に行くようになりました。
当時は、買い物も男たちの仕事で、女はひとりもいません。瞬く間に私の周りには人垣が出来ました。
東洋人の売春婦と思われたのでしょうか・・・四才くらいの小さな子供までもが、上から下まで舐めるように見るのです。
カフェにもひとりで行きました。
店の周りを囲むように、人が集まってきます。
お金を持っているらしいとわかると危険なので、よれよれのパジャマの上に、夫の擦り切れたセーターを着て近所を歩き回りました。
そのあとを、何人もの子供たち、犬たちがついてきます。
怖いとは思いませんでした・・・若かったのですね。










# by aomeumi2 | 2019-01-26 13:49 | 喜怒哀楽な人々 | Comments(18)




膨大な写真の整理をしています。

その中から、さまざまな物語が立ち上がってきます。

カナダの東側、ハリファックスの小さな村を、私たちはチロリン村と呼んでいました。
マグロの畜養事業は、ここで始まったのです。

この地で夫は、親友ゲーリーと出会いました。
二人とも、26才でした。

やがてゲーリーは村の娘、アナと結婚し、可愛い赤ちゃんが生まれました。
私も結婚し、チロリン村へ行きました。
ゲーリーが、翌春に私たちの結婚式を挙げてくれることになり、場所は、岬の先の小さな教会に決まりました。
しかし、私たちが帰国している間に、カナダの事業は閉鎖になり、スペインに漁場が移りました。

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やがて、ゲーリーが脳腫瘍になり、スペインに移った夫がチロリン村に会いに行きました。
その時の写真です。カイユは可愛い盛りでした。
二ヶ月後、ゲーリーはあっけなく亡くなりました。
数年後、アナは息子のカイユを連れて再婚したと聞きましたが、なんと、アナも同じ病気で亡くなりました。
それ以来、チロリン村の人も、カイユの消息を知りません。
時々思いだしては、どうぞ幸せになっていますように・・・と、祈っていました。
もう、45、6才にはなっているのでしょう。
もし、彼の行方がわかったら、すぐに飛んでいき、抱きしめてやりたいと思います。






チロリン村には、なにもありませんでした。
住んでいたのは、この、シー・ブリーズ(海のそよ風 ?) というホテルでした。
村には、この、ホテル兼、レストラン兼、バーしかありません。
週末になると、生のウエスタンバンドが入り、村の老若男女が集まりました。
最後には、必ず殴り合いの喧嘩が始まりました。

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すぐ裏に住む、メンディーが毎日遊びにきてくれ、そのうち、家に帰らなくなりました。
彼は、やさしいお兄さんという感じで、私を振り返りながら先に進み、いろんなところに連れて行ってくれました。

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お姉さんという感じのジョシーも、どこからともなく、毎日来てくれました。
三人 ? で、よく海に行きました。
目の前を、夫の乗る船が通り、私たちに気がつくと汽笛を鳴らします。
メンディーもジョシーも興奮して、吠えたり、砂を蹴散らかしたり・・・喜びました。

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家でパーティーを開くことになり、ゲーリーに食べ物の好みを聞くと「生のニンジン・・・」と答えます。
他には ? と、聞くと、茹でたジャガイモ・・・他の人に聞いても、同じような答えでした。
餃子や肉じゃが、いろいろな料理を並べましたが、ほとんど手つかず・・・ニンジンとジャガイモが、瞬く間になくなりました。
焼き肉のタレで焼いた肉は、唯一、口にあったようです。

しばし、カナダの田舎町を、懐かしく思いだしています。








# by aomeumi2 | 2019-01-24 11:49 | 喜怒哀楽な人々 | Comments(12)




「ケーキ ? ミエル・・・デモ、ジャナイ。パン ? ・・・ジャナイ・・・」と、スイス人、ロックがくれたものです。
「アマクナイ・・・」
とてもきれいです。

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はい、確かに、アマクナイ・・・塩味のケーキ ?
庭仕事のあとのおやつに、とてもよかった。木の実がたくさん。
スイスの香りのよいルイボスティーで頂きました。

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ワクワクするようなものも、西の方から届きました。

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目の覚めるような美しい青い鯖寿司。
少し常温で待たなければいけないらしいのでしたが・・・待てない。
昼に二つづつ・・・身の厚い、とろけるような鯖です。
椎茸のおつゆを作って、頂きました。
し〜ん・・・一言もしゃべらず。
夜は、冷や酒で・・・おいしいものは、人を黙らせるのですね。

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さて、毎日ともなると、メニューに行き詰まります。
朝はパン、夜は酒とつまみだけですから、昼はご飯です。
MUJIのグリーンカレーがあったので、米二合に放り込み、庭のパクチーをたっぷり。実に楽チン。
塩鮭を酒とローズマリーに漬けておき、オリーブオイルで焼きました。胡麻のみそ汁と、セロリのマリネ。
スパイスが利いていて、なかなかです。MUJIに行ったら買い置きしよう。
ここに、半熟の卵焼きなど乗せたらよかった・・・と、食べてから思いました。

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レパートリーが少ないので、同じような料理が続きがちです。
そんなときに、思いがけないいただき物は、ありがたいです。
人は(夫は)どうしてお腹が空くのだろう・・・と、毎回、考えながら台所に立つキッチンドランカーの老妻です。
「やってらんないよ、飲まなきゃ・・・」 あ、酔った・・・。







# by aomeumi2 | 2019-01-21 17:32 | 天然な暮らし方 | Comments(20)

来た ! ・・・メジロ




待ちかねていた瞬間・・・メジロが来ました。
窓辺には、なかなか来てくれないので、ちょっと離れたところに夫が餌場を作りました。
翌日、夫婦で来ました。
慣れるまでは、交代で食べています。
可愛くて・・・いつまで見ていても飽きません。

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一方、夫のお気に入りも来ました。
庭で薪を切ったり割ったりしていると、近くでじっと見下ろしているのです。
真ん中の上の方に写っています。
辛抱強く待ち、夫が離れると、すぐに降りてきます。
彼のお目当ては、木の中の虫らしい・・・木屑の中を歩き回り、ついばんでいます。
夫は、それを見たくて、途中で仕事を辞めてしまいます。

メジロよりはだいぶ大きく、ヒヨよりは小さく、尾が短い。
図鑑で探しても、見つかりません。
木の枝や、屋根の上を行ったり来たりしながら待っている様子がとても可愛いのです。

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楽しみに訪問しているブログがしばらくお休みすることになりました。
寂しい・・・。
庭仕事や手仕事、お出かけ、飼い犬や猫、などなど・・・なんでもない日常が美しい写真とともに、淡々と綴られています。
寒くなって庭には花もなく、お出かけも少なく、ブログに載せる出来事も特にない・・・ということで
暖かになるまでお休みするそうです。

確かに・・・山暮らしでも、同様で、昨日とほぼ同じ今日が続きます。
私は出かけませんから、旅やお出かけのブログが好きです。
それと、料理が苦手なので、おいしいものが載っているものも好き。毎日の献立のヒントにもなります。
人にも会わない暮らしですから、コメントはちょっとおしゃべりをした気分です。
居ながらにして世界が広がります。
楽しませていただいている分、こちらも、訪問される方が、なにか楽しくなれるようなものを載せたいものだとは思いますが、
難しいものですね。

今日は曇りで庭仕事はできそうもありません。
さて・・・何をしましょうか。







# by aomeumi2 | 2019-01-20 11:50 | 笑う犬 | Comments(14)